結婚式当日は、朝からとにかく慌ただしい一日だった。
会場に着くとすぐに準備が始まり、普段の自分では絶対にできないような、きらきらしたメイクをしてもらって、つけまつげをつけ、髪も華やかにセットしてもらった。
過去イチかわいくなっていく自分の姿が嬉しくて、心がはずんだ。
普段はふとした瞬間に暗い気持ちになっていたけれど、この日ばかりはそんなことを忘れて、私はちゃんと幸せな花嫁だった。
だけど、この日に撮った写真は、のちに私をひどく惨めで、悲しい気持ちにさせるものになる。
着飾って幸せそうに笑っている花嫁が、このときすでに半年近くも抱かれていない。惨めな女だなと、自分の姿に虚しくなった。
目次
結婚式の夜は無情に…
披露宴が終わってからは二次会へ向かい、そこでも友人たちに囲まれて、笑って、朝からずっと続いていた賑やかな時間を思いきり楽しんだ。
ふたりとも朝からの慌ただしさで軽い疲れを感じながらも、1日の余韻をかみしめるようにニコニコと笑いながら手を繋いで、わたしのアパートへ帰った。
ふぅっと疲れから解放される。
それぞれにシャワーを浴びて、今日の日の特別なメイクを落とし、いつものわたしに戻る。
1LDKのアパートで、ふたり横に並んで座り、室内だというのに手を繋ぎ、体を寄せ合いながら楽しかった1日を振り返った。
可愛く甘えながら、このときのわたしは ”きっかけ” を作ろうとしていた。
触れて欲しい、抱かれたい。
なのに無情にもその願いは届かず、彼氏から「夫」となってもいつも通りの夜だった。胸の奥をぎゅっとつかまれたような苦しさを感じながら、わたしはまた自分を納得させようとした。
今日は朝から本当に忙しかっただけ。きっと、明日になれば。
そう言い聞かせて、わたしも眠るしかなかった。夫となった人に身を寄せながら。

