#9 セックスレスなのに胸を触る夫。虚しいだけのスキンシップ

セックスレスといっても、夫婦のスキンシップがまったくなかったわけではなかった。

朝、仕事へ行くときには「いってらっしゃい」のキスをする。

わたしがキッチンで料理をしていると、夫はよく後ろから抱きしめてきて、そのまま胸を触ったりもした。

わたしは胸が大きくて、若い頃はそれがコンプレックスでもあったのだけど、夫はわたしの胸が好きだったみたいで、とにかくよく触ってきた。

キスもなければ、服を脱がせる気配もない。服の上から胸をもてあそび、やがて満足したようにわたしの体から手を離す。

その行為の先に、セックスは存在しなかった。

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触られるたびに、虚しくなった

夜、ベッドに入ると、夫はパジャマの上からわたしの胸を触った。ときにはブラをずり上げて、直接肌に触れる。

最初の頃は、ここから始まるのかもしれないと期待していたけれど、何度繰り返しても、それ以上のことは何も起こらなかった。

ただもみしだくだけではなく、先端をもてあそんで、そして胸に手を添えたまま、安心したように眠ってしまう。

本来なら快感を与えられるはずのその愛撫に、わたしの胸の奥はぎゅっと締め付けられる。

自分の「触りたい」という欲求だけを満たして寝入ってしまった夫の横で、わたしは反応してしまった自分の体を認識する。

規則的な寝息に、すっかり夫が眠ってしまったことを確認して、わたしは静かに自分を慰めた。触って欲しい、満たされたい。虚しい。

なんでしないの? わたしはしたいよ。求められたい。

こんな思いをするくらいなら、触られないほうがマシだと思うのに、一方で、胸だけでもいいからその体温を感じていたいわたしもいた。

そんな矛盾した気持ちを抱えながら、いつもやりきれない思いを抱えながら眠りについた。

日常にある夫婦のセックスに憧れて

もう叶わないけれど、わたしにはずっと憧れていたことがある。

夫婦で一緒にベッドに入って、自然にセックスが始まること。

料理をしていたら後ろから抱きしめられて、キスをして、そのままお互いを求め合ってしまうこと。

休日の朝、目が覚めるとわたしの寝顔を愛おしく見ている ”夫” がいて、どちらからともなく始まること。

特別なことじゃなくていい。

「今日する?」なんて確認する必要もなくて、どちらかが一方的に求めるのでもなく、自然に、お互いが触れたくなって、求め合う。

わたしは、そんな夫婦のセックスに憧れていた。

もう叶わない今になっても憧れているけれど、想像する相手は夫ではない。

夫とのセックスを望むことは、もうなくなった。

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