新居での生活が始まってしばらくした頃、夫が地元の友人たちと飲みに行くことになった。
夫は以前から、自分の友人が集まる場所にわたしを連れて行きたがるところがあった。
結婚前にも何度かそういうことがあり、この日も夫から途中で合流するように言われていた。
夫たちは一次会を居酒屋で過ごしたあと、二次会で近くのスナックへ行くことになったらしい。
わたしは夫を迎えに行くついでに、その店で合流した。
下ネタに心をえぐられる
わたしたちが新婚夫婦だと知ると、店の女性スタッフは場を盛り上げようとしたのだろう。「新婚さんなら毎日やりまくってるんでしょ〜」と、下世話な言葉を口にした。
新婚夫婦をからかう、夜の店ではありがちな冗談だったと思う。だけど、その言葉はわたしの心に突き刺さった。
ぎゅっと胸を締めつけられて、息が詰まった。
聞こえないふりをしてやり過ごそうとしたのだけれど、女性スタッフはわたしに聞こえなかったと思ったのか、同じ言葉をもう一度口にした。
夫も、夫の友人たちも、困ったような曖昧な態度を示すだけで誰も突っ込まない。反応の薄さに、また女性スタッフは繰り返した。
笑顔を作るのはもう無理だった。
わたしは席を立ち、夫を置いたまま一人で店を出た。
新婚なのにしていない現実
新婚なら、毎日セックスしている。そうなのだ。
だけど、わたしたちは毎日どころか、もうずっとしていなかった。新婚旅行でさえも。
夫に抱かれないことに何度も傷ついて、それでも誰にも言えずにいたわたしにとって、その言葉は笑って受け流せるものではなかった。
夫の友人たちは、わたしが下ネタを嫌って席を立ったのだと思っただろう。
いい年をして下ネタひとつ流せない、怒りっぽい奥さんだと思われたかもしれない。たぶん、そう見えただろう。
そして実際、わたしは怒っていた。
あの下世話な言葉を何度も繰り返した女性スタッフに。そしてわたしを抱こうとしない夫に。
誰にも見つからないように隠していた傷口を、無理やり開いて引き裂かれたような激しい痛みを感じていた。涙があふれるのを止められなかった。
店を出て歩き出したわたしを、夫が追いかけてきた。
わたしを掴んだその手を振り払ったとき、わたしは何か言葉を夫に投げつけたと思う。抱かないことを責めたのか?いや、まだこの頃はそれも伝えられていなかった。
泣きながら、一人で家へ向かった。
夫は、あの涙の意味を理解しただろうか。あのとき、何を思ったのだろう。
その夜のことを、わたしたちは何も話していない。

