新婚旅行、最初の夜。
なかなか眠ることができなかったわたしは、翌朝もまだ早い時間に目が覚めてしまった。
結婚が決まった頃からセックスがなくなり、それでも結婚式が終わればきっと復活するだろうと思っていた。
けれど、結婚式の日にも何もなかった。そして新婚旅行が始まっても変わらない。ただその現実を突きつけられただけだった。
隣では夫が眠っている。苦しんでいるのは、わたしだけ。そう思ったら涙が出てきた。
一度泣いている自分を認めてしまうと、あとからあとからあふれてきて、声まで漏れそうになる。
こんな理由で泣いているなんて、夫には説明できない。
わたしは夫を起こさないように、声を押し殺しながら泣いていた。
言えなかった涙の理由
けれど、その気配に気づいたのか、夫が目を覚ましてしまった。泣いているわたしを見て、慌てて起き上がる。
「どうしたの??」と驚いている。夫はこういうとき、優しかった。
わたしが悲しんでいれば心配してくれるし、泣いていれば慰めてくれる。だけど、涙の理由など言えるわけがない。
「あなたが抱いてくれないから」そんなことは言えなかった。
自分だけが性欲を抱えているようで恥ずかしかったし、そんなことを泣くほど気にしていると知られたくなかった。
ただ、夫のほうから、わたしを抱きたいと思ってほしかった。
「この旅行をすごく楽しみにしてたから、あと数日で帰らなきゃと思うと寂しくて」わたしはそう答えた。
それも本心ではあったけれど、もっと深くてもっと強い寂しさはそこではない。
夫はそんなわたしを見て、声をあげて笑って、そして愛おしそうに頭をなでてくれた。
「散歩いこうか」と、夫は起きたばかりにもかかわらず、わたしの手をとって部屋から連れ出した。
それでも抱かない
手をつないで静かなビーチを歩いた。昼間の賑やかさとは違う、静かな海。
さっきまであんなに泣いていたのに、夫と並んで歩いていると、それはそれで穏やかで、幸せな時間だった。
夫は、わたしのことが好きなのだと思う。
泣いていれば心配してくれるし、頭をなでてくれる。面倒くさがらずに受け止め、手をつないで歩いてくれる。きっと、愛情はある。
だけど抱きたいとは思わないのだ。
夜になると、心のどこかで期待してしまう自分がいたけれど、結局、6日間の新婚旅行で、夫に抱かれることは一度もなかった。

