「長く付き合った人と別れると、次に付き合う人とはすぐに結婚する」とはよく言ったもので、私もその例に漏れなかった。
夫とは交際から1年も経たずに結婚が決まり、およそ1年半ほどで夫婦になった。
結婚が決まった頃にはすでにセックスレスで、私が悩みはじめたのもこの頃だった。
でもそれまではどうだったのか。
今となっては、その間に夫とどんなふうにセックスをしていたのか、なにも思い出せない。
まったくなかったわけではないはずなのに、記憶はほとんど残っていない。
出会いから交際まで
夫とは、仕事関係で出会った。
人当たりがよく、仕事ぶりも堅実で、周囲からの評判も悪くなかった。
いわゆる「モテないタイプ」ではなかったと思うのだけれど、
どうやら自分から積極的に恋愛をしようとする人ではなかったようだった。
私たちの距離が縮まったのも、そんな夫を心配した共通の友人が開いた飲み会がきっかけだった。
私は彼の隣に座らされた。
元々面識はあったし、印象も悪くなかったから特に違和感もなかったけれど、そうやって、すべて“お膳立てされた”場だった。
何度かグループで遊ぶうちに、自然と二人で会うようになった。
周囲はそれを当然の流れとして後押しし、今思うと、私はただ用意されたレールの上を歩いていただけだったのかもしれない。
進まない関係
二人で会うようになっても、夫からのアプローチらしいものは、ほとんどなかった。
旅行に行けば、律儀にお土産を買ってきてくれるし、用事がなくても短いメールが届く(当時は、まだLINEもなかった)。
でも決定的な言葉は、いつまでも出てこなかった。
なんなんだろう、この関係は。そう思いながら私は、曖昧な時間を過ごしていた。
そのうち私は確かめたくなった。
今となっては後悔でしかないことだけれど、元来、白黒をはっきりさせたがる性格がここでは裏目に出たのだ。
ある日、私は夫に聞いた。「私たちって、どういう関係なんですか?」
その問いかけに、夫は少し驚いたような戸惑ったような顔をしてから、間を置いて「付き合ってください」と言った。言わせた…のか…
そんな馴れ初めで付き合いはじめた私たちだったけれど、付き合ってからは、キスもしたし、セックスもした。普通のごく当たり前の恋人同士のように順を追って。
はじめてセックスをした日のことだけは覚えていて、私のひとり暮らしのアパートに着くや否や抱きしめられ、強く求められた。
つまり付き合いはじめは特に違和感はなかったということ。
異変に気づく…
週末は私のアパートで過ごすことが多く、それが当たり前のようになっていった。
そしてある日、唐突に気づいた。
ベッドの枕元に置いていた、手のひらにのるぐらいの小さな蓋つきの入れ物。
その中のコンドームがそういえばまったく減っていない。
あれは何個入りだったんだろう。
その小さな入れ物は結婚したあとも、私の苦しみの掃き溜めのように、新居のクローゼットの片隅にずっと置いてあった。
それを捨てたのは結婚して10年くらいが経った頃だったろうか。
使い切ることができなかった。あの日から今日までの自分の悲しみや苦しみが押し寄せてきて、声をあげて泣きながら断ち切った。

