「レスられ妻です」
そう書いた瞬間、胸の奥に小さな棘が刺さるような感覚がした。ずっと前からそこにあったはずなのに、言葉にしたとたん、急にリアルな痛みに変わる。
今まで誰にも話せなかった。
話せるわけがなかった、こんなこと。
いい年をして何を言っているの?と呆れられるだろうか。
いや、そもそもリアルではセックスの話などタブーなのだ。
仮に心許せる友だちに話せたとして、もし彼女たち夫婦の間に今もそれがあったら?
私はきっと羨ましさと劣等感で、打ちのめされてしまう。
これ以上、傷つきたくはない。
Twitterで出会った同じ痛み
ある晩、眠れずに布団の中でスマホをさわっていた。
40代も半ばになって、これまで以上にセックスレスの問題は私の中で大きな苦しみとなっていた。
このまま終わるのかな、私は…
ふと、Twitterの検索窓に「#セックスレス」と入れてみた。
Twitterが提示した検索結果に並んだたくさんのつぶやき。
手が止まった。
息が詰まった。
そこに吐き出された言葉は私の声だった。
スクロールをするたびにぎゅっと強く胸が締め付けられる。どこかの誰かの、心を切り裂くような悲しみの声に共感があふれてくる。
私だけじゃなかった。
私もだよ、分かるよ。その気持ちを伝えるためのいいねボタンを押したくて、私はレスられ妻としてのアカウントを作った。
やがて、そこで出会った人たちとの交流の中で「既婚者向けのマッチングアプリ」の存在を知り、婚外にたどり着くのだけれど、このときはまだそんな未来は想像もしていなかった。
優しさに支えられ、苦しさに向き合う
それからの私はTwitterの中で、「40代のレスられ妻」として存在した。
夫と結婚するまで「男性はセックスがしたいもの」という思い込みがあったけれど、Twitterの、いわゆる”レスられ界隈”には「セックスをしたくない夫」をもつたくさんの妻たちがいた。

あーちゃん @achan334
セックスレスって、ただエロがなくなるって意味じゃない。
心まで切り離されていく感じ。
なのに隣で平気な顔して寝られるのが一番つらい。



さやか@レスられ @sayaless
「したくない」の理由を説明してもらったこと、一度もない。
向き合ってくれないくせに、穏やかな関係だけはキープしようとするの何?
私も以前はセックスレスを解消しようと話し合いをしたり、気持ちをぶつけたりもしていたけれど、もう15年以上が経ち、もはや夫とのセックスを想像することもできなくなった。
だから私にとっては「夫に求められなかった傷」は過去のものだと思っていた。
でも誰かのつぶやきを見て、苦しくて苦しくて涙が出た。長い間に刻まれた傷はなにも癒えていなくて、ただ薄いかさぶたを作っていただけなのだと知った。
そのかさぶたの下には今でも生々しく深い傷が広がっていて、剥がれるたびに鮮血が流れた。
私はいつになったらこの痛みから解放されるんだろう。
繋がりの中にあった救い
それでも、同じ苦しみを抱えた人たちとのTwitter上でのやりとりは、ひとりで苦しんでいた私にとって心許せる場所になった。
住んでいる場所も顔もわからない相手と、こんな風につながりあえるとは思わなかったし、今もなお、私はTwitterの中にいる。